
熱中症について
夏に向けて熱い日が続くと、熱中症の人が増加します。軽度な症状であれば多くの人が経験していると思われますが、中には入院が必要なほど重篤な状態になる場合があります。自宅・外出中に行う予防や、熱中症を疑う状態やクリニックへ相談すべき状態を記載しています。

熱中症の症状と定義
「暑熱環境にいる、あるいは居た後」の症状として、めまい・失神(立ちくらみ)・生あくび・大量の発汗・強い口渇感・筋肉痛・こむら返り・頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感・意識障害・痙攣・せん妄・高体温などの諸症状を呈するもの
ただし、感染症や悪性症候群、甲状腺クリーゼなどの原因を除いたもの

熱中症の原因と病態
大きく2つの状態を合併します。また、悪化する可能性があります。
- 暑熱障害:体温が異常に上昇し、神経細胞が障害される
- 脱水:水分摂取不足や発汗過多による体の水分が減少する
- ①②が重篤になると多数の臓器の機能不全を起こす

毎年1000人を超える死亡者
気温が上昇すると全国では熱中症のため救急搬送される患者さんがニュースで報道されます。厚生労働省の発表によると、国内の熱中症による死亡者数は、2023年が1651人、2022年が1477人であり、稀な死亡者数ではありません。

気象以外にも、年齢や持病により熱中症のリスクは増加する
気象条件以外にも熱中症になりやすい場合があります。
年齢別では、65歳以上の高齢者が最も多く、次いで乳幼児(生後28日以上満7歳未満)が熱中症になります。両者とも、体温調節機能の低下や、適切な水分摂取ができないことが原因です。特に高齢者は、多くの基礎疾患を持ち薬剤(利尿薬や抗精神病薬など)を使用している場合があり、これらも熱中症発症のリスクになります。また、障害のある方も症状を訴えられない場合があり、注意が必要です。
発生数の多い場所は、住居>道路>公衆(屋外)>仕事場(道路工事現場・工場・作業所など)の順になります。自宅にいれば、熱中症にならないとは限りません。

熱中症の重症度
以前は、熱失神(heat syncope)/熱痙攣(heat cramps)/熱疲労(heat exhaustion)/熱射病(heat stroke)に分類して表現されていました。2015年に分類が改訂され、更に2024年のガイドラインよりⅠ-Ⅳ度の4段階に分類するようになりました
Ⅰ度 | めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返りなどの症状を認めるが、意識障害はない |
Ⅱ度 | 頭痛、嘔吐、倦怠感、脱力などの症状があり、受け答えがはっきりしない |
Ⅲ度 | 意識障害(傾眠傾向)や痙攣、検査にて肝・腎機能障害、血液凝固異常のいずれかを認める |
Ⅳ度 | 深部体温40度以上、刺激しても覚醒しない(重度の意識障害) |
症状がなくでも下記の対策を実施して熱中症を予防することが重要です。また、症状が出現したら、対策を行い我慢せずクリニックへ相談も必要です。特に、周りの人が見ていて受け答えがいつもと違う場合はⅡ度以上の熱中症の可能性があります。すぐに相談してください。

予防と治療方法(自己管理)
環境の調節(屋内) | エアコンの温度調節、遮光カーテンやすだれの使用 |
環境の調節(屋外) | 日傘や帽子の着用、日陰の利用と休息、炎天下の外出は控える |
着用(衣類) | 通気性がよく、吸湿性・速乾性にすぐれたもの |
着用(その他) | 保冷剤や冷たいタオル、ハンディファン(携帯扇風機)など |
水分・塩分の補給* | 喉が渇かなくてもこまめに摂取 |
*心臓や腎臓が悪い方は塩分の過剰摂取には注意が必要です。かかりつけの医師に相談してください

診療所・総合病院で治療
①Passive Cooling | 冷やした輸液製剤投与、クーラーや日陰・涼しい部屋で休憩 |
②Active Cooling | 体温管理、体内冷却、体外冷却、血管内冷却、従来の冷却法(氷嚢、蒸散冷却、水冷式ブランケット)、ゲルパッド法、ラップ法 |
③薬物療法 | 多臓器不全に対して薬物や機械を使用して治療 |
- みたけ内科循環器科クリニックでは、点滴を併用したPassive Coolingを行います
- 重症度に合わせて上記治療を組み合わせます
- 重症度Ⅱは①を行い効果が不十分なら②を行います
- 重症度Ⅲ-Ⅳは②③の治療が必要です。入院が必要な場合も多く、総合病院へ紹介させていただきます。

体調が悪くなったらご相談ください
重症化する前に治療して、健康に過ごしましょう
参照
熱中症診療ガイドライン 2024年、日本救急医学会